アトピー性皮膚炎の新しい治療薬「デュピクセント」

皮膚科の毎日の外来で、必ず診察する病気の一つがアトピー性皮膚炎です。
しかし、アトピー性皮膚炎は慢性の皮膚疾患の一つでもあって、月単位もしくは年単位で通院してもなかなか良くならない方もいらっしゃいます。そうこうしているうちに、通院を諦めてしまう方も散見されます。
そんな方たちにとって、強い味方になり得る、アトピー性皮膚炎の新しい治療薬「デュピクセント」についてお話しします。
「デュピクセント」は「IL-4」と「IL-13」というサイトカインの働きを直接抑えることで、皮膚の2型炎症反応(Th2細胞による炎症)を抑制する、アトピー性皮膚炎治療薬として、初めての生物学的製剤(抗体医薬)です。皮膚の内部に起きている炎症反応を抑えることによって、痒みや皮膚症状を改善します。
ステロイド外用剤、タクロリムス外用剤、抗ヒスタミン剤の内服、シクロスポリンの内服等、既存の治療薬を一定期間施行しても、十分な効果が得られず、皮疹が広範囲に及ぶ患者さんに投与します。
2週間に1回、皮下注射をします。
投与期間は、最低一年間を推奨しますが、効果判定は16週で行います。
在宅で皮下注射をすることが可能なので、これまで、仕事でなかなか受診する事が難しかった方も、3か月の処方で受診頻度が減らせます。自己注射の指導は、看護師が行いますので、ご安心下さい。
なお、デュピクセントは、先程もお話しした通り、「IL-4」と「IL-13」を選択的に抑制するので、シクロスポリンの内服でみられる免疫抑制の副作用はなく、従って、コロナ感染にかかりやすくなるような心配もありません。
アトピー性皮膚炎の治療目標は、「症状がない状態、あるいはあっても日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態」「軽い症状はあっても、急に悪化する事はなく、悪化してもそれが続かない状態」です。
もちろん、デュピクセントの投与をせずに、既存の治療で、治療目標を達する努力を、患者さんと一緒にしていますが、デュピクセントの登場によって、より治療目標までの距離が縮まっだと感じます。
温泉でのんびりしたり、旅行に行ったり、ファッションを楽しんだり、対人関係で積極的になったり、夜ぐっすり眠る、仕事や学業に集中するなど、生活スタイルを向上させる為の選択肢の一つになると思います。
デュピクセントは、現在、発売当初より薬価は下がりましたが、高額な医療にはなりますので、無理のない範囲で、「デュピクセント」の適応のある方にはお勧めします。

 

デュピクセントの薬剤費の目安
3割負担で、初回の(2本)39,814円、2回目以降(1本)19,907円
年収に応じて、高額療養費制度が適応される事があります。

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